玉手箱あけたら 第2話

前回は開業したところまで話しました。

理想に燃えて?開業したのですが、なにぶん経営者としては未熟な院長です。

色々な問題が出てきました。

開業当初は、歯科助手(全員未経験)5名と妻(衛生士)の6人でスタートしました。

妻以外はアルバイト希望だったので、3人ずつローテーションしてもらいました。

最初は1日10人くらいをゆっくり治療していきましたが、それでも慣れるまでは時間がかかりました。

3ヶ月ほどで、1日20人くらいになり、忙しくなってきたところ1人が体調不良で退職し、その2ヶ月後さらに一人退職してしまいました。

その頃になると、急激に来院者の数が増え、一人では無理と判断し、大学病院から後輩をアルバイトで雇い、ユニットも2台から4台に増やし、予防の体制も整えていきました。

残った3人は、常勤となり忙しく働いていました。

1日の来院者数は40人を越え、お昼休みもあまり取れない状態が続きましたが、とにかく頑張ろうと必死に働きました。

1年後事件は起きました。

妻が妊娠して産休に入り、新しい衛生士さんをアルバイトで2人雇いました。

とある日の朝、診療所の裏口の扉の前にタバコの吸い殻が落ちていました。

ポイ捨てかなと思いながら掃除をしました。

面接で喫煙者は採用しなかったので、まさか従業員だとは思いませんでした。

数日後、近所の方から匿名の電話があり、公園でうちの従業員がタバコを吸っていて、しかもポイ捨てをしているとのこと。

みっともないとお叱りの電話出した。

すぐに理由を聞くと、忙しくてストレスで吸い始めたとにこと。

その時、私は3人の常勤を退職させると明日からの診療ができなくなると考え、スタッフルームに空気清浄機を置くからその前で吸うように話しました。

今考えると何て馬鹿な決断をしたのでしょう。

甘い対処をしたことで、さらに1ヶ月後、浅野掃除の最中に3人がサボって裏口の前でタバコを吸っているのを偶然目撃してしまいました。

ゲキ怒りです。

裏切られた気持ちと院長としての不甲斐なさがぐるぐる回りました。

“帰れ!“

精一杯の一言でした。

彼女たちは、悪びれず“私たちがいないと困るんじゃないですか?“と聞いてきました。

“大丈夫、一人だってやる“

残ったアルバイトの衛生士さんにお願いをして慣れない受付を頼みました。

45人、待たせて、待たせて、謝って、謝って、5時以降は一人で診療をしました。

7時までの診療ですが、後片付けが終わったのは10時でした。

だめだ・・・・

無理だ・・・・

とても疲れていたのにその日は眠れず、朝5時に診療所にきました。

すると7時ごろ3人の常勤が反省文を書いて現れました。

もうに2度と裏切りません。

もう一度だけ許そうと思いました。

でも、それは間違いでした。

自分でもわかっていたのかも知れません。

それから1ヶ月後、左脇腹の激痛で熱も出てきたので夜に救急で病院にいくと、緊急入院が必要と言われました。

憩室炎・・・・

腸に穴が4箇所あき、炎症を起こしていると。極度のストレスで。

朝まで点滴を打ち、明け方無理を行って診療所へ行き、スタッフにお願いしました。

1、予約の入っている全ての方に電話連絡をして、説明し、わかってもらう。

2、連絡がつかない方やきてしまった方に対応する。

3。急患が来たら、他の医院へ紹介する。

以上3つのことを伝えると入院しに行きました。

その際3人の常勤は、院内の掃除など出来ることは全てやりますと約束してくれました。

次の日は土曜日で、朝、診療所に電話をかけました。

ねぎらいの言葉と少し早く帰っていいよと言うつもりでした。

誰も出ませんでした。

番号を間違えたと思い、何度もかけました。

誰も出ませんでした。

あまりの情けなさに、布団をかぶつて泣きました。

第3話に続く。

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