玉手箱開けたら 第10話

底まで落ちて、たどり着いた一つの答え。

“自分だ、自分を変えないと“

大嫌いな自分、自信もない。どうすれば?

そこからいろんな本を読みあさり、考えました。

自分を見つめるための本、みとめる本、あり方の本、読めば読むほど

自分のことを全く知らないということがわかりました。

何が好きで、何が嫌いか?

価値観は何か?

どんな人生を送りたいか?

お金はどのくらい必要か?

何をしている時が、楽しいか?

たくさんの問いを立て、自分に尋ねました。

子供の頃からさかのぼって、考えたりもしました。

わがままで、泣き虫で、じっとしてられなくて、甘いものが大好きで、母が大好きだった。

もし、自分が自分の子供だったら、やだなぁとか思ったりしました。

そんな時、“長女のことはどのくらい知ってるのかな?“という思いが湧いてきました。

彼女のことが知りたい。

でも、話してくれない。

どうする?

その頃、長女は起きている時は、ずっと本を読んでいました。現実逃避です。

“どんな本を読んでいるんだろう?“

『クビキリリサイクル 西尾維新 』

これです。

なんて題名だ。

これは無理か。

でも読んでみよう。

読んでみると、見た目と違って読みやすく、意外と面白かったので、

本を返すときに“面白かったよ“と声をかけると、

“どこが?“と久しぶりに長女の声が聞けました。

返事が返ってきてので、びっくりしながら、主人公や登場人物の話をすると、

“私はね、、、、“ とすごい勢いで話出しました。

ひとしきり話した後、笑顔で続編を8冊渡されました。

『クビシメロマンチスト』

『クビツリハイスクール』

『サイコロジカル上・下』

『ヒトクイマジカル』

『ネコソギラジカル上・中・下』

全て読み、感想を話し合いました。

気がつくと2.3時間経っていました。

目の前には、小さい頃に夢中で遊んでいた時の表情をした長女がいます。

“ ああ、忘れていたな、この顔が見たかったんだなぁ、

学校行かなくても、こんな顔で毎日過ごしてくれたら、それでいいなぁ“

そんなことを考えていると、パパの読んでいる本も読んでみたいと言われました。

その後は毎日、本の話をするようになりました。

家族でトランプをしたり、人生ゲームやモノポリーなどのボードゲームをして遊びました。

ある日、本の話をしていると、学校に行けなくなった経緯をポツリポツリと話し出しました。

当時の心境を聴いて、私は号泣しました。

なんて自分は馬鹿だったんだと。

なんであの時聴いてあげられなかったのかと。

一つでは無かった。

たくさんの事が重なって、彼女は動けなくなってしまった。

その動けない彼女を私と妻は、無理矢理動かそうとした。

上から乗っかって、押し潰していた。

“本当に辛かったね、パパ、ごめんな、謝るよ“

やっとの思いでそういうと、抱きしめました。

抱きしめられた長女は、苦しそうに小さな声で耳元で言いました。

“今からでも高校受験できるかな?妹と同じ学校に行けるかな?

パパと一緒に働けるかな?衛生士さんになれるかな?“

私は答えました。

“もちろん、大丈夫だよ“

中学1年の5月から2年が経っていました。

不幸の玉手箱 第11話に続く

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA